お札が一瞬で別の紙幣に変化する“ビル・スイッチ”。世界各国70人以上のマジシャンたちの手順を集大成した待望の書!
インパクトの大きさと演じやすさが両立された稀有なマジック
「千円札を一万円札に変える」「白紙の束を一万円札の束に変える」といったマジックは非常に根強い人気があり、これまでも多くの手順が考案・発表されてきました。そのインパクトの強さと道具の日常性、そして使い勝手のよさはプライベートで演じるにも、プロが現場で演じるにもたいへん重宝されるもので、レパートリーに加えている人が多いマジックの一つです。
「手垢のついたマジック」に潜む大きな可能性
多くのマジシャンが演じるがゆえに「見慣れた感」のあるプロットですが、それは有名な一部の手順だけが多く演じられているから。実際には非常に豊富な現象、手法、演出がある一大分野なのです。本書の前書きで、「ビル・スイッチの本を作らないか?」とティム・トロノに持ちかけられたジェイミー・イアン・スイスはこう書いています。
「何を考えてるんだ?このマジックはモノも分かってない連中にいじられまくったあげく商品も粗製濫造されているじゃないか。なのに、まだ性懲りもなく売ろうっていうのか?まだやり足りないって言うのか?」
アル・ベイカーが残した名言「多くのマジックが“改案”の名のもとに汚されている」にぴったりのマジックがあるとすれば、ビル・スイッチこそがそうでしょう。しかしティムの声はいつものように柔らかだったにも関わらず、そう簡単には引き下がりませんでした。「いや、それはどうかな。結構面白い改案を発見したんだ」(中略)その後、数本のビデオが届きました。ヨール・ライアポールの巧妙な『100ダラー・ターンオーバー』、ジョン・アレンが考案した、手のひらを上に向けた状態で演じる『キャッシュ・イン・ハンド』、ポラロイドカメラを使った目眩がするほど巧妙なプロットの『メメント』などなどでした。(中略)私が白旗を揚げようとしてからも、まるで特殊撮影のようなホアン・パブロ・イバネスの『世界最速のビル・スイッチ』が届いて私を打ちのめしたものです。
「わかったわかった、降参だ」私はティムに言いました。「君が正しかった。十分、本を作る意味がある」
必ず「他の人がやっていない」「あなた好みの」「強烈に不思議な」ビル・スイッチが見つかる一冊
本書には初公開となる原案者自身が実際に使用した手順そのものの解説に続いて、どんな手順にも応用できる実用的なテクニックの解説を加え、さらに多くの新しく新鮮なアプローチを収録しました。サムチップを使うもの、使わないもの、手のひらを観客に向けて演じる方法、上に向けて演じる方法。様々な保持の仕方、スチール、アド・オン、示し方、そしてエキストラの隠し方に関する様々な有用なテクニック。さらに1ドル札から100ドル札へ変化させる通常の現象に加えて、ミスメイド・ビルを使うもの、あり得ない場所へ移動するもの、交換現象、トーン&レストアなどの素晴らしい手順はもちろんのこと、従来のカテゴリーには分類できない手順も解説しています。
70名以上のマジシャンによる数十以上の手順の他にもビル・スイッチの歴史や原案者を探しあてるまでの記録、著名マジシャンらによる「これはビル・スイッチなのかビル・チェンジなのか」「サムチップは使うべきか、使わないべきか」「折り畳む理由づけについて」といった考察も収録した、この分野を総括する決定版と言える一冊です。
この過剰とも言える情報を前にすれば、あなたはもう他人と同じ手順を行うことの言い訳はできません。これだけのものがあれば、自分の演技を他のマジシャンたちと差別化するのに必要なものはすべて揃っているからです。あなたにはあなたのゴールを決定し、唯一無二のアーティストとして選択を行う能力があります。レパートリーを選択するという行為は徹頭徹尾クリエイティブな行為であるはず。この本はアーティストとしての責任を自分に課し、そして観客に果たすための格好の素材となるでしょう。
ジェイミー・イアン・スイス 前書きより
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