道具不要、一対一からステージまで対応できるwhich hand系メンタルマジック集
メンタルマジックの分野に which hand と呼ばれるジャンルがあります。
簡単に説明すると「観客(一人、もしくは複数)の手に小物を握ってもらい、マジシャンはわずかな質問で(手順によっては質問すらせずに)、誰のどちらの手に小物があるか当てる」というもの。
著者のマノス・カルタキスは自ら考案した「V」という原理を使い、このテーマを深く掘り下げた書籍『V』を発表しました。その後、さまざまな改案を行いグレードアップした手順を2016年に『V2 Expanded Edition』として発表。
本書はその完訳に加え、原著には収録されていない2手順も追加した決定版です。
根っこは「どの手に小物があるかを当てる」というシンプルなものですが、それが様々な形で展開されていきます。そこから見えるこのジャンルの奥深さや可能性の大きさに驚かされます。
V2の特徴
本書に収録されている作品には、次のような特徴があります。
- (質問をしたとしても)分かるはずのない状況から、確実に当ててしまえる。
- 観客には正直に答えてもらったり嘘をついてもらったりするが、それでも100%当てられる。
- 当てずっぽうで当てた場合の確率は1/2や1/4だが、それだけに「もし違う手に持っていたらどうなっていたのか」「もし違う答えを言っていたらどうなっていたのか」「もしあそこで持ち替えなかったらどうなっていたのか」というサスペンスが生まれ、当たる際の「まさか!」感が非常に強烈なものになっている。
- 道具を一切使用せず、完全に即興で演技可能(一部ステージ用の手順を除きます)。
- もちろん日本語でもまったく問題なく演技可能。
マジシャンの知的好奇心をくすぐる巧妙な構造
紹介される手順は、シンプルな原理のものから順番に収録されています。
そのため、読み進めるごとに最初の手順からどんどん工夫が加えられていく過程が分かる構成になっており、クリエイトや改良の思考をたどる意味でも非常に読み応えのある内容になっています。
また、それがどんどん面白くなっていく過程が特に興味深いものでした。
最初の原理説明やその使い方では、ある原理をここまで理論的に突き詰めるのか、という感動があります。
かと思うと、それができるのならこういう方法も考えられる、というようにより効率的に少ない質問数で実現できる方法が出てくる。
さらにそこで止まらず、そこに演出を加えてエンターティメントにする方法も紹介していきます。彼の演出が加わると、やっていることは同じなのにまったく原理にたどり着けない別物の演技にみるみる変わっていく過程が圧巻。パズルのようなトリックがエンターティメント性溢れるパフォーマンスに変わる様がリアルに描かれます。
そこからさらに一歩踏み込み、エンターティメントにしたからこそのセリフや観客の反応を利用し、さらに質問を少なくする方法まで飛び出します。
メンタル的な「追えない不思議さ」と、手軽さ。一対一からステージでの演技まで応用できる汎用性。知的好奇心をくすぐる巧妙さ、構造美。このすべてが味わえる珠玉の一冊です!
huwan –
かなり面白いです。よくかんがえて見ればタネがわかるものをわからないような言葉で現象を起こしています。
僕は友達に試してみましたが気がつかれることはありませんでした。メンタル系のマジックをしたい人はよいかもしれません。